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過去の受賞作品

受賞作品審査員講評3次審査風景

審査員講評

関東・関西審査委員長 伊久 哲夫 (積水ハウス株式会社 取締役 専務執行役員)

本コンペも今年で11年目を迎え、これまでの10年間を経て新たな10年に向けてのスタートとなる節目の年となりました。今回はその新たなスタートを感じさせるものがいくつかの作品に表れていたのではないかと思います。ここ数年最終審査に残る作品の中にも見られることですが、このコンペの名称である「住空間」そのものを提案するのではなく「構成する要素」やecoデザインとしての「創るプロセス」を提案するというものです。今後もまだまだ新しい提案領域が広がってくるのではと強く感じました。
一方で応募から3次審査まで半年間にも及ぶ本コンペの最大の特徴はその育成型プロセスにあり、リアルサイズで考え創ることを自ら実体験し学ぶことにあります。最終のモデル製作では、各段階における審査員の指摘に対してどのように応え進化成長したか、如何に悩み学んだか、そして1/1模型の完成度が大きな評価ポイントであり、その努力が感じられブラッシュアップが確認できる作品が最終的に最優秀賞として評価されました。
応募される皆さんには、本コンペテーマである「ecoデザイン」或いは生活をより豊かにするための「住空間デザイン」についてよく勉強し、果敢に挑戦されることを期待しております。

関西審査委員 長町 志穂 (LEM空間工房 代表取締役)

既存の生活環境における「境界」に着目し、新たな「領域」を生み出そうとする試みが評価されたのが今回の特徴だろう。原寸制作に至ったもののうち3点は、非常にパーソナルな皮膚感覚にうったえかけるもので、まさに原寸の制作無しではそれらのもつ心地よさや独特の空気感は伝わらなかっただろう。時代を表徴するゆるやかで曖昧なあるいは開きかつ閉じる境界に対し、身体サイズで閉じきる不可思議な空間提案があったことは、学生コンペならではの醍醐味であった。全作品への総評としては「住空間」のとらえ方そのもの変化だ。よりパブリックな環境を人の暮す環境としてとらえ問題を提起する姿勢は、建築を単体でとらえず環境全体を計画していきたいという意思の表れであり、彼らが将来つくるであろう広義のエコデザインに期待したい。

関東審査委員 曽我部 昌史 (神奈川大学 工学部 建築学科 教授)

原寸化した4案中3案が構法的な提案だったことが、今年度の特徴である。素材にまつわる諸課題を、技術的かつ社会的な眼差しに根ざしたアイデアにより、独特のデザインにまで昇華させている。そのプロセスも共通しており、原寸の展示会場では例年感じることのできた生活感や身体感は薄れ、特徴的な物質感が現れた。その存在感は魅力的だったし、広いレンジで深く考えられた提案に不満はない。一方で、直接的な暮らしの場への提案が原寸化されなかったことが残念なのも、正直な気持ちである。来年は、今年度の提案に刺激を受け、同じくらいの思考の広がりと深さをもった、普段の暮らしや身体的な感覚に根ざした提案が増えることに期待したい。

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